イケメン三銃士と抗がん剤治療
目次
私の「イケメン三銃士」紹介
私が勝手に「イケメン三銃士」と呼んでいる先生方がいます。
一人目は主治医のE先生。ちょっとワイルドでクールな雰囲気に、抜群のファッションセンス。まるで映画に出てきそうな風貌の持ち主です。
二人目は、先進医療病棟で執刀を担当してくださったH先生。全身からにじみ出る優しさが印象的で、少し頼りなく見えるところもご愛嬌。いわゆる“犬系男子”という言葉がぴったりの先生です。
三人目は、2回目の抗がん剤投与で担当になったO先生。気さくで癒し系、まるで弟にしたくなるような存在。顔を見るだけでホッとできる、そんな安心感があります。
もちろん、他にも“イケメン”医師はたくさんいらっしゃいます(笑)
抗がん剤治療1クール目の内容
入院当日、息子は修学旅行に向けて元気に出発しました。私は家の用事を済ませたあと大学病院の入院棟へと向かいました。
息子が東京に宿泊するのと同時に、私の“宿泊先”は先進医療病棟の301号室。ラッキーだったのは窓際のベッドだったこと。外の光が差し込むだけで、気持ちも少し前向きになります。
今回の治療内容は、「フルオロウラシル」の24時間点滴投与に加えて、「ドキタキセル」「シスプラチン」という抗がん剤との1週間のお付き合い。
24時間点滴に繋がれている状態でしたが、過去に切迫流産・早産のため1か月間も24時間点滴で過ごした経験があるため、大きな苦痛は感じませんでした。
ただ、やはり針が刺さっていることによる不便さ、特にトイレの時などはつらさがありました。
副作用と食事との闘い
治療が始まる前、一番の不安は副作用でした。
身近な人の体験談やテレビで見かけるような吐き気や倦怠感、自分が果たして耐えられるのかどうか…。
けれど実際には、妊娠中のつわりの方が私にはきつかったように思います。
治療初日は吐き気止めの点滴から始まり、数日間は気持ち悪さやだるさが続きました。
枕元にはガーグルを置き、ベッドで横になっている時間がほとんどでした。
そして、予想以上に辛かったのが「食事」です。病室にはいろんな食事の匂いが混ざって漂い、それだけで病院食がまったく喉を通らなくなってしまいました。
しかも苦手なお粥と刻み食。売店で「練り梅」を買ってチャレンジしてみたものの、やはり見た目からして食欲が湧かず、箸が進みませんでした。
私の中で、一番重要な食事。E先生とH先生に相談したところ「吐いてもいいから、少しでも口にできるものを…」と快く対応してくださり、お粥をパンやそうめんに変更してもらったり、食べたいものを食べられるタイミングで食べられるように許可を頂きました。
自由奔放な患者が爆誕!わがままに寄り添ってくださる先生方の優しさに、心から感謝しました。
息子とのビデオ通話と面会
修学旅行から帰ってきた息子とは、毎日のようにビデオ通話をしていました。
学校が近かったこともあり、病室での面会が難しくても、面会室や売店前で待ち合わせてお弁当を一緒に買い、短い時間でも顔を合わせることができました。
副作用には個人差があるとはいえ、私の場合は4日目を過ぎたあたりから少しずつ体が慣れてきて、院内を散歩する余裕も出てきましたが体力は確実に落ちていました。
それでも、廊下ですれ違う「小さな戦士たち」つまり同じく抗がん剤治療をしている子どもたちが笑顔で挨拶してくれる…そんな姿にも励まされながら、1週間の入院治療を終えて自宅へ戻ることができました。
とはいえ、退院したからといって、すぐに以前の生活に戻れるわけではありません。体力の消耗は想像以上でした。
食事の準備もですが、洗濯物を干す事だけでも体力が続きませんでした。
それでも、また2クール目が待っています。少しでも以前の体力に戻れるように努力しました。
味覚の喪失とそれでも食べる理由
なんとか1クール目の治療を乗り越え、体力は落ちたものの、自宅で息子とクリスマス、そして17歳の誕生日を一緒に過ごすことができました。
例年通りとはいかなかったけれど、こうして息子と過ごせる日々があることに、ただただ感謝の気持ちでいっぱいでした。
ただ、副作用は吐き気だけではありませんでした。
医師からも事前に説明は受けていましたが、味覚が徐々に失われていく現実にも直面しました。
何を食べても味がせず、食欲はみるみるうちに減退。大好きだったお肉を口に入れても、「これ、何食べてるんだろう?」という感覚。
食感だけがあって、まるで砂を噛んでいるような感覚でした。
それでも私は、「口から食べること」にこだわり続けました。たとえ味がしなくても、食べる理由があったんです。できるだけ体力を落としたくない、ただそれだけ。
息子には、自分の状態を包み隠さず伝えていましたが、衰弱した姿だけは見せたくない――そんな母としての意地も、少なからずあったのかもしれません。
次回予告:副作用との向き合い方
息子、ご近所、そして“イケメン三銃士”の先生方。
たくさんの人に支えられて、私は無事に新年を迎えることができました。
そして今、次なる抗がん剤治療の日が、またじわじわと近づいています。
次回は、副作用との向き合い方について、また少しずつ綴っていこうと思います。